食べてあげる。骨も肉片も残さずに綺麗に桔平を綺麗に食べあげる。筋張って硬い肉を噛み切って噛み砕いて、文字通りひとつになろう 桔平。爪のひとかけらだって誰にもくれてなんてやらないよ。俺だけがお前にとっての支配者なんだから。忘れたとは云わせない。あの日からお前を独占する権利を得ているのは地上でただひとり 俺だけなんだから。だから桔平 お前は何も心配する必要もなければ不安を覚える必要もない。俺だけがお前の味方で俺だけがお前を孤独に突き落とすことが出来れば慈しむことだって出来るんだってことだけを覚えていてくれればお前は俺の掌の中で生かされることが出来るんだからね。そうだな 桔平、お前の髪の毛は掌に収まるくらいに小さな小さな棺にしまって大切に飾ってあげよう。稲穂のように眩い色彩が光を帯びて透ける様がとても好きだった。だからね俺の心底愛した色を愛でてはお前のためだけに愛を囁くよ 桔平。愛しているよ愛してる愛しているんだ。俺にはお前だけだよ だから 愛しているから食べてあげる。ねぇ 桔平。お前のこと好きだったけど、好きって感情だけで収まりきることの出来ない愛がいつ生まれたのかなんて可笑しな話自分でも分からないんだよ。でもね、お前は俺にとって大切な人間になりすぎてしまったってことだけは確かだからね。お前知らなかっただろうけれども俺って人間はねそんなまわりくどい遣り方でしか人を愛することが出来ない人間なんです。だからね そんな俺の愛を一心に受け止める権利を得た桔平は地上で一番倖せな生き物なんだって 誇ってください。





カニバリズム的愛情論(20100212)