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寝息を数える。誰かが隣にいるという違和感を拭えないまま、善透は瞼を閉じ寝入った振りをして壁に寄りかかりながら薄い呼吸を繰り返すサビ丸の寝息を数えている。日中の騒々しさとは打って変わり時々寝言を漏らす以外は至って静かであるそのギャップが意外なようでいてお庭番とやらをやっているのだから本来のサビ丸は理性的で物静かな人間なのではなかろうかといらぬ勘繰りさえする始末で、狭い部屋に二人でいるのに一人であるような存在感のなさがその静けさがどうしようにも善透を落ち着かなくさせるのだ。たった数日、されど数日。寝入った振りをして寝息を数える意味のない行動がこのまままでは習慣化してしいそうだと、今宵も無意味に数を数え眠れぬ夜を過ごすのだろうかと気が滅入る。それでも。それでも だ。誰かが隣にいるという日常は面倒なようでいて存外いいものなのかも知れないと想い始めている自分がいることも確かで存外流されやすい性格である己に呆れ半分、それでもいいかと毒されることに不快を抱かない甘受っぷりに苦い笑みが浮かぶがそんな自分自身が善透は嫌いではなかったりしている。心地いいくせに睡眠を妨害するような迷惑極まりない規則正しい寝息を数える。優しくなれるような、くすぐったくてあったかいような不可思議な浮遊感を抱きながら数える数字は悪戯に膨れ上がるばかりで今夜もろくに眠れそうにないのだろうけれ ど。
(空っぽのコップが満たされていくように善透が抱え込んでいた淋しさが膨れ上がる数に溶け合うようにひとつひとつと 消えてゆく)
そのくうかんをみたす(ひとりのときよりあったかい ふたりだともっとあったかい)(20100212)