「私に触れる貴方の無骨な指が嫌いです。私の名を呼ぶ貴方の声が嫌いです。私を賛美する貴方の嘘が嫌いです。酷い人。近藤さん 貴方はとても残酷な人ですね。誰も愛してなどいないくせに愛を囁いて、求められていることを知っているくせに優しさでつけ離して結局のこと貴方は貴方だけのものなのでしょう?例えば私が今此処で貴方を望んだとしても、貴方は私だけのものになってはくださらないのでしょう?」そんな卑劣な『愛』なんて欲しくなんてありませんと拒絶する言葉など耳に入らないとでも云うように「それでも 貴女を愛しているのです」と紡ぎ続ける それ。美しい嘘を紡ぐあの人の唇はいつだって否定を肯定することからはじまっている。ならば、その身体で覆い隠すように抱いた真実は一体あの人を何処へと誘うのでしょう。一体 何処へ。何の為に、誰の為に、未来を言葉を嘘を真実を消し去るというので しょう?(自分の為に泣けないあの人が哀れで誰かの為だけに嘘を捧げ続けるあの人が悲しいくらいに愛しいのです。嗚呼 まるで。子供のように素直に泣くことの出来ぬあの人は愛しいと囁きながら笑って苦しいと震えながら泣いているようにも見える。それでも。耳を澄ませば哀しいと叫ぶ慟哭が聞こえるのにそれでもあの人は気づかぬ振りをして笑うのでしょう。今日もまた痛みを殺して優しく微笑みかけるので しょう。 どうしようにもなくばかねひとね うそつき。)





哀れと泣けぬ嘘である(20100221)