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そして、またひとつ嘘をつく。怪我を隠して平気だと嘯き、追い詰められ磨り減った精神を偽装することで微笑む兄を憎む弟を嘲笑うように正守は嘘という名の罪を重ねていく。それは、葛藤と猜疑心の板ばさみの中で揺れ動き悩まされる弟の安穏の為にと表面上は装っては見せるが、結局のところ全ては己の自己満足の延長線上に存在するちっぽけな虚栄を守るための嘘である。故に、哀れな弟を追い詰めるようでいて最終的には自分自身の傷をこじ開ける行為は、殺到的な自慰に似ているなどと自嘲しながらも浸ってしまうのだろうか。それとも、束の間の快楽に身を委ねることで現実からの逃避を求めているのだろうか。明確な答えなどないまま吐き捨てた何度目かなんて忘れてしまった嘘は、まるで 救いの言葉に似ている。
そして、そんな「嘘」ほど美しい言葉を正守は 知らない。(例えばの話、明日で終わる世界なら愛せるぐらいには いとおしい。)





うそをつくおとこの はなし(20100619)