呪われて しまえ。
憎むべき呪詛は兄にとってはおそらく至福の言の葉に聞こえるのだろう。何でもかんでも己の都合のいいように世界を作り変えてしまう兄の脳髄には、良守の抱いた憎しみも怒りも悲しみですら歓喜として響くのかもしれない。意味のない一挙一動ですらいらぬ深読みをしてまるで正当な理由があるものだと認識し捉えてしまうのかもしれない。些細な言葉ですら最上の音楽に耳を傾け続けるような男の行く末など、いっそのこと 呪われてしまえばいいのだ。烏森に、墨守という血筋に、己の宿命に、見放された方印に、存在そのものを一度は拒絶されているくせに、失った全てを弟にを委ねようとする自分勝手な男の業など背負う謂れなどはじめからありはしないのだから。呪われてしまえ 呪われてしまえ!俺はあんたを認めない。あんたを受け入れない。
存在価値を失ったあの男と結ばれた血肉ごと  いっそのこと すべて 呪われてしまえっ!





のろうおとこの はなし(20100619)