夕闇は嫌いだ。徐々に薄れゆく緋色はあの日の空の色に似ていて、迷子のように途方に暮れる笑みを浮かべる彼を想い出させるから。実際に彼は迷子そのものだったのだろう。帰る場所どころか居場所すらもみつからないままだったのだから。あまりにも残酷すぎた現実が彼から奪ったものは多くて(そんな彼もまた、彼自身の手によって多くのものを奪ってしまったのだけれども)信じていた全てが仮初であったのだから。元凶はお前であるのだよと云われるままに罪と罰を天秤にかけたところで結局は彼自身が全ての責任を背負い、崩れ行く世界を救ったのだから。そして、自分自身もまたその当事者のひとりであるにも関わらず彼の願いとは裏腹な選択を止めることも出来なかったのだから。無力でしたと嘆き彼が生きることを赦された選択はなかったのかと考えたところで全ては手遅れであるにも関わらず、強引に押し付けて奪った命の重みを今更噛み締めたところで、彼は、ルークは二度と帰ってなどこないのだというの に。なのに、視界を覆いつくす燃えるような緋色はこんなにもルークを想い出させ、幼子のような背に投げかけた最期の言葉は彼にとっての救いであったのだろうかとそんなことばかりを考えてしまうから。嗚呼、だから。ちりちりと焼け付くような痛みを伴った彼等を連想させる夕闇たまらなく 嫌いなのだ。





それは、正当化したい罪です(君を裁いた世界はあまりにも 醜すぎました)(20100619)