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「お前の声が好きだ」と、品のいい優しい声色が赤く染まった近藤の頬を撫でる。彼のお方は、「何でもいい。余はお前の話が聞きたい。」と、野太く繊細さの欠片もないがさつなそれを聞きたいと近藤に微笑みかけ、近藤もまた敬愛する彼のお方の慰みになるのならばとその時々によって話す内容は異なるが真撰組のこと城下のこと時には故郷である武州の話を織り交ぜて嬉々として物語るのだ。身振り手振りを交えての近藤の話に嬉しそうに目元を綻ばせるの彼のお方は慈愛に満ち溢れていて話の途中でありながらしばしば見蕩れてしまうことが多く、その度にまるで夢のようだと近藤は軽い眩暈を覚える。シャボン玉のように淡く儚く美しい、夢。けれどもそれは現実であり、事実今もこうして流れる時間は身震いするほどに緩やかで時折零れる彼のお方の笑い声ですら甘いのではないかと想えるほどに美しい。本来ならばこうして話をすることさえも叶わない遠いお方が自分の話に耳を澄ませるばかりか、せがむように話の続きを催促する様は夢ではないと理解しつつも夢のようであり、まさにふわりと夢見心地とはこういうことをいうのではないだろうかと感じ入ってしまう。聡明であり誰よりも優しいお方の為に近藤が出来ることは限られているが、それでも彼のお方の名の下に彼のお方の愛する国の為に剣を振るえることを何よりも誇りであり当然の如く彼のお方の為に命を投げ出す覚悟など真撰組の結成時より出来ている。そのお方が、「近藤」と自分の名を呼び微笑みかける姿に近藤はいつだって心臓が蕩けてしまいそうな至福と歓喜で気が触れてしまうのではないかと酔いしれてしまうのだ。
「お前の声が好きだ」と彼のお方が微笑みかける度に、近藤は美しい戦慄と共に胸奥で燻る疼きに小さな火が灯る様を自覚する。身体を伝う火照った熱が全身を早足で駆け巡り小さな鼓動から息吹が生まれたと錯覚するかのように。
そうして今日もまた瞳を開けたまま美しい夢を 見る。
あまいゆめをたべたいのです(20100709)