女との距離は近しいようでいて遠く、手を伸ばした先に掴めたものは己の存在の意味の如く文字通りの「虚無」。深海で届かぬ光を求める愚行そのもの。それほどまでの執着を。幕切れ間際になって唐突に理解した焦がれと欲に、女が気づくことはないのだろう。それを少しだけ惜しく想う。まるで神に縋り祈りを捧げる「人」のようでもあり、人の形をした願いのようでもあるかのような。脆弱であるにも関わらず矛盾を抱く何もよりも強く美しい、それ。ならばボロボロと砂屑のように崩れる肉体はさながら祈りの代償か。より深くより強い業を求めたばかりに下される鉄槌ならばせめて最期に「心」の在り処を説いた女にその 言葉を。
「俺が怖いか 女」
女。お前は俺が知る中でもっとも醜く美しい存在だ。そんなお前が今にも泣きだしそうに顔を歪めながら凛とあろうとする意味を。女。いつの日か 俺のいない世界で知るのだろうか?
深海に似た海の底で 歌(20101005)