悔んでいるのかと問われても、きっと。その問い掛けに最も相応しく適切な答えなんてものは存在しなくて。なら、御免って?それって何に対しての、誰に対しての、謝罪?どうして貴方がそんな顔をするの?どうして自分勝手な私を責めてくれないの?どうして貴方を傷つけた私を心配してくれるの?そこにほんの少しでも不平や不満が垣間見えたなら、貴方の言葉を素直に受け入れることだって出来たのに。なのにね。どうしてかな。いつも貴方は真っ直ぐで、いつだって純粋な優しさしか与えてくれない。虚圏にくる前の私だったらそんな貴方を嬉々として受け入れることが出来たのに。貴方の正義を肯定することだって簡単に出来たのにね。どうしてかな。虚圏で過ごしたほんの僅かな時間がそんな私を変えてしまったみたい。だってね おかしな話でしょ?私を救いに来てくれた優しい貴方の言動全てにこんなにも苛立たしさを覚えてしまうのだから。貴方は強くて眩い ひと。かつてはそんな貴方に闇を照らす光のような羨望を抱いたこともあったけれど、闇で覆われた世界で呼吸をすることで新たに見えたこともあるの。私、貴方に憧れてばかりだったけれども同時にそんな貴方を恐れてもいたのね。御免ね、御免ね。誰かの為に傷つき続ける貴方は私の為にも傷いついて。でもね、そんな傷だらけの貴方を、私のせいで傷ついた貴方を、私は直視できずにいる。貴方の痛みを拒もうとするもうひとりの私がいる。きっと貴方はそんな私を笑って許してくれるんだろうね。でもね。私は、そんな醜い私自身に耐えられないよ。御免、御免ね。私の勝手に振り回された貴方に、貴方達に、もっとも刺の少ない言葉を選んで無理やりに傷を抉じ開けようとする私の愚かさをどうか嘲笑って。そうでなきゃ、もう、一緒にいられなくなる。隣を 歩けなくなる。私は貴方が想っているほど綺麗でもなければ純真でもないどこにでもいるようなエゴ塗れの薄汚れた人間でしかないんだよ。私が焦がれた夢の国の、王子様。美しい幻を見せてくれた ひと。夢から覚めた私を待ち受けていた現実は悲痛なものでしかないのに、なんでだろう。貴方を追いかけていたあの頃には得ることの出来なかった少しばかりの幸福に、今、私は満たされている。瞳を閉じても開いても砂のように溶けてしまったあの人が瞼に焼き付いて、私だけを見つめ私だけの為に手を差し伸べてくれている。御免、御免ね。何もかもを捨て去ってでもあの人の手を取りたかったのだ、と。消えるのならばあの人諸共と望み縋りつきそうになった私の弱さを、どうか。他の誰でもない貴方に肯定して欲しいの。お願いです。貴方を恨んでしまう私を許さないで下さい。私は判で押したような模範解答を述べる優等生になんてなれない。望むような笑みなんて、満足いくような言葉なんて、納得するような理由なんて。感謝や謝罪なんて そんなものっ!嗚呼っ。嗚呼、私ね 何一つもってなんかない。もってなかったんだよ、 黒崎君。
みにくい みにくい あひるのこ(20101007)
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