井上とウルオキラがどんな関係であったのかは知らない。「なんとなく」、どちらに対しても執着めいたものを感じて。「なんとなく」、それにあてられ落ち着かない気分にさせられたが、傍から見ても鈍いと云われる俺でさえも感じた「何となく」に最後の最期まで当人達は気づかないままであったのだろうか。それともあえて気づかない振りをしていたのか。今となってはそれを知る方法も失われ(もとい その原因を作りだした俺が知る意味もないのかもしれない、が)行き場を失った「なんとなく」は、井上の胸の中で蓄積され続け、これから先、彼女は答えの出ない「なんとなく」を抱えて生きてゆくのだろう。それだけは漠然と理解出来る。(理解できたところで俺が井上に対して出来ることなどないに等しいのだろう、が。)全ての答えは風化した男がもっていた。そして唯一の答えを持っていた男はそれを抱いたまま消え、井上だけがひとり取り残される 現実。(そして、絆のようなもので結ばれていた二人を切り裂いたのは俺自身。)ウルオキラ。お前は 知っていたか。井上は何があろうともいつも笑顔を絶やさない。哀しくても苦しくても笑う、そんな気丈で強い奴なんだ。そんな井上の、今にも泣き出してしまいそうな顔を。お前にだけに向けられたその意味を。お前は知っていたか。知っていたのだろうか。目前で途方に暮れる彼女を見つめる。沈黙の世界で痛いくらいに響く風音に耳を澄ませながら、俺は、ただただ散った男に対して胸の奥底でそんなことばかりを 問いかけている。





風化君葬(20101007)