最も敬愛する上司に裏切られた僕等の痛みは似ているようできっと同じものではないのだろう。君の苦しみは君だけのもので、僕の痛みは僕だけのもの。置いて行かれた僕等の苦しみは似ているとはいえ、所詮は別々の性質を持っている。ねぇ 雛森君。僕はね、君と慣れ合うつもりはないし、無理やりに痛みを分かち合って理解しあおうとも想っていないよ。ただね。僕は、僕等の似通った境遇と苦しみを利用したいとは考えている。そんなことを告げたならば軽蔑されてしまうのだろうな。でもね 雛森君。僕は支えを失い拒絶という選択肢を選べなくなった今の君を抱きしめたいと考えている。抱きしめて、慰めて、君の痛みに付け入り君の傷跡を抉じ開けたい。僕以外の誰かのせいで君が壊れてしまうというのならば僕が君を壊してしまいたいんだ。例えそれが君の笑顔を奪い去る結果になったとしても僕は後悔などしないのだろう。恋情とは似ても似つかないこの醜くくも愚かしいだけの執着は、君が消えてしまっても消滅することなどないのだろう。雛森君。僕はね長い間君へと抱え続けた君のすべてを委ねて欲しいと願う罪を何と呼べばいいのか未だに分からずにいる。だから弱り切った今の君に付け入って認められたいと赦されたいと願ってしまうんだ。ねぇ 雛森君。君にも見えるかい?今宵の薄月は何もかもをも曖昧にしてしまうような静寂を携えているね。砂漠に落ちた一本の針を掬いあげるかのような距離感のつかめない闇夜で不器用な僕等は哀れな僕等の未来を祝福するように肩を震わせることしか出来ない。まるで 泣き方すら忘れてしまった哀れな子供みたいに ね。(ねぇ 雛森君。例えばこんな夜に君を抱きしめることが出来たなら、君の乾いてしまった眼球は愚かな僕だけを映し出してくれるだろうか。不器用な僕等の為に 君の雨は 降ってくれるだろうか。)
神様に捨てられた僕達(20101009)
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