憧れているという。瞳を輝かせて俺を見つめるそれに、おそらく本来の俺の姿は映ってはおらず幕之内の作り出した迷惑な偶像がさもキラキラと光り輝いていることだろう。腹立たしい前に呆れる。怒りを通り越して反吐が出る。どうしようにもない苛立ちに絶望する。結局のこと、あいつは俺のことなど何にも見ちゃいないし分かってもいないことだけは嫌がおうでも理解でき、そうやってあいつは簡単に俺を追い詰めていく。なのに、そんな関係性しか築けないくせをして傍から見たら誰もが焦がれる立ち位置に立っているということだけは確かなのである。でも ただ、それだけ。それだけでしかない。いつだってそうなのだ。俺とあいつとでは求めるものが違いすぎて同一線上に立つこそさえ出来やしない。「格好いいね」と紡ぐ言葉にどれほど傷つけられているのか、きっとあいつは知らないままなのだろう。頬を赤く染めて「いつだって応援しているよ」と微笑む姿に、何度傷を抉られたか分かりはしない。所詮はそういうことなのだ。あいつにとって俺はアイドルであって現実ではないということなのだ。あいつの無意識に吐き出される言葉鋭利で、ひとつまたひとつと傷を負うたびに痛感する。くそくらえ!そんな羨望は望まなかった。望みたくも なかった。
偶像賛美(20110217)
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