「お前の髪の色は月と同じだな。」
ホラと頭上で輝く月を指さし、坊ちゃまに同じ色だろ?と話しかける。キャッキャッと嬉しそうに、月とヒルダの髪を見比べる坊ちゃまの愛らしさに、頬が緩んだヒルダではったが内心では焦っていた。月の色と同じ。闇夜に溶けてしまいそうな男鹿の黒髪や、柔らかな坊ちゃまの髪とは違う、淡い色彩を放つ金色の髪を男鹿は月と同じ色だと云った。ヒルダはあまりこの髪の色を好いてはいない。どこまでいっても曖昧で中途半端に存在を誇張するこの色に嫌悪を抱いていたが、何故だろう。今なら、少しだけ男鹿の言葉を受け入れられそうな気がする。もしかしたら坊ちゃまが嬉しそうな顔を見せてくれたからなのかもしれないし、ただ単に、見上げた月夜が美しかったからなのかもしれない。理由は分からない。けれども、それでも。
あの月のように輝くそれが、ほんの少しだけ 好きになれそうな気が する。





あのつきと おなじ(20110218)