あの男の心の中には、ひとつ。神聖な聖域がある。傍から見ても、如何にそれが大切だったのかと窺い知ることが出来てしまうほどに慈しむ姿。隠すこともなく、イノセンスの使徒がエリアーデという名の悪魔を愛していると柔らかな笑みを浮かべるのだ。過去形ではない。それが禁忌だと理解しても、この男は大切だと胸を張り続けるのだろう。その愛故に、咎落ちとかしたとしても悪魔を愛する自分を誇るのだろう。失くしたものを大切に抱え、愛しいと 泣く。素直に感情を吐露する芸当など自分には出来ない。出来ないと知っているからこそ、それほどまでにあの男に想われた悪魔を少しだけ、ほんの少しだけ、羨ましいと思うのかも しれない。





泣きたいほどの、沈殿(20110220)