彼の世界は綺麗。行動倫理から些細な言動に至るまでそこには常に矛盾が孕んでいるから。なのに、それを隠そうともしないから丸見えなんだよ。傷、がね。心臓部にポッカリと空いた空洞は常に嘆きの声が木霊しているんだろう。求めて、失って、懺悔して。でもね、僕は知ってる。繰り返してばかりの彼が救われないことを。何故なら、彼に救いを与える存在を彼が彼の手で殺めてしまったのだからね。砂粒のように零れてしまった存在をその手で二度と抱きしめることすら叶わない。懺悔に暮れても何も取り戻せない彼に残されたものは少なくて。多分、達観したように笑うことと使命に殉じて戦うことぐらい。それくらい。そんな彼の戦う姿はとても、美しい。消耗して、魂を削って、傷の上に傷を刻んで 笑って。嗚呼、こんなことを云ったら嫌われてしまうかな。でもね、哀しみに支配された彼はとてもとても 綺麗。壊して壊して破壊して、哀しみが癒えるどころか愛が深まるばかりなんて可哀想なくらいに矛盾してるのに、その矛盾さまでもが愛しいのだからね。もしかしたら、そんな彼の繊細さに彼の愛した悪魔は惹かれたのかもしれない。そんな下世話なことを勘ぐってしまうくらいには好意を持ってるんだよ 僕は。赦されるのなら彼が壊れるまでもを見続けていたい。そんなことを告げたらそれこそ本当に嫌われてしまうだろうな。でもね、それでも綺麗なものは綺麗。美しい人を愛でることは決して悪いことではないでしょう?だから、御免ね。僕を赦さなくていい。そんなのいらない。赦しなんていらないから諦めることを 諦めてあげない。
うつくしいひとを このむ(この愛を 鑑賞)(20110222) |