「どうしたら、綺麗に花を手折れるのかな。」
醜い方法ならいくらでも知っているんだけど、ね。と、達筆なそれで筆を滑らせながらの問禅めいた問い掛けに、刃鳥は沈黙を持って応える。正守は時々、刃鳥には想像も及ばない突飛した事柄を無意識に口にするだが、そんな彼に常識は一切通用しないことを、彼女は、副長という補佐役の使命を帯びたその日からの長い経験により理解しているので、別段動じることもなければ深読みすることもない。ただ、また彼が溺愛する『弟』についてよからぬことを考えているのだろうと察し、顔には出さないがうんざりは、しているが。
あの兄弟の絆は、一見拙いようでいてしっかりとした糸で結ばれている。強度はそれほど強くないが、「いざ」という時に発揮するそれは、驚くほど循環にお互いを高め息の合った連携を見せることもしばしば、で。そういった時、彼等の、『墨村』という血の繋がりを刃鳥は鮮明に感じ取るのだ。正反対のようでいて、似通っている彼等。見ている世界は違うようでいて、きっと、おそらく、誰よりも、近い。
刃鳥には、正守の望む世界が見えないが、あの『弟』ならば、彼と同じ世界を夢見ることも可能だろう。
それに羨望を覚えるのは、何よりも強固な繋がりに女の自分では太刀打ち出来ないからなのかも 知れない。





繋がりを、色に例えるとして。(20091220)