対等であると、呼べる。少なくとも、鳳仙がそう認める相手は宇宙にその名を轟かせる海星坊主と呼ばれる男だけだ。分かりあえたことなど一度たりともないし、分かりあう気もない。おそらくは、何か特殊な状況に陥らない限り共に肩を並べるどころか背中を合わせることもない。何もかもが対極であり互いが互いのことを気に喰わない癖をして、その生き様を肯定する気もなければ否定する気もない。だが、不思議と憎めない。それどころか、夜空を舞う蛍のように人を惹きつけたかと想いきや仕舞には瞳が離せなくなる。己と同様、『最強』の名称を背負う相手に対して、なんとも形容しがたい感情を抱いている。などと云ったならば。その男はどんな顔をするのだろうか。怖いもの見たさにその面を拝んでみたい気もするし、あるいは。これ以上の関係悪化を恐れて何も知らない振りを通して現状を投げ出すような気もする(そもそも、その感情は鳳仙しか知る由もないものであるのだから、杞憂でしかあり得ないのだが)。どちらにしても広大な宇宙でひとり、ただ ひとり。その男だけが鳳仙を理解することの出来る男であることに変わりはない。どこまでいっても対極であり、良くも悪くも夜兎の血に忠実すぎる男は、密かに鳳仙の憧れであった。「たら」「れば」と続く仮定の話は好かないが、「もしかしたら」と想う。獣のような獰猛さに彩られた美しい瞳と対峙した瞬間に魂を奪われてしまったのかもしれない、と。友ではない。だが、宿敵と呼べる因縁を持ち合わせてはいない。その男との関係をなんと名称づければいいのか分からぬまま、立ち位置の決まらぬままに好意を抱き、気づけばそんな男にどうしようにもない眩さを感じている。強いてあげるのならば、それは恋しく焦がれなおもその身を焼きつくす天敵である太陽であるかの如く。告白しよう。その感情は鳳仙が知る感覚の中で最も愛に近い場所に ある。
あなたという 獣 (鳳仙と海星坊主 20110505)
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