『血、』という。これ以上ないほどの、至高の繋がりがあるからこそ正守はどれだけ汚れようが生きていける自覚があった。
死しても不変なのである。故に、この『血』という名の美しき絆は、形を変えることはあっても消えることはない。己の立ち位置を見失うことも、ないのだ。正守は、墨村の血を愛している。が、それと同じくらい、憎んでもいる。自分を甘受しながら自分を否定した墨村を、気が触れそうなほどに慈しんでる。一時期は、己に流れる『それ』が途方もない罪であると嫌悪したこともあったが、汚れれば汚れるほどに際立つ『墨村の血』は、何もない正守にとって方印と同等の、それ以上の価値を与えてしまった。それからなのだ。正守が『血』に拘るようになったの、は。『血』と共に生きてゆくことを、誓ったの、は。

妖と対峙する。血塗れる。墨村を汚すそれに、歓喜する。(生きるとは、なんと、甘美で美しい。)





生まるる、歪み(20091221)