「恋が、美しいだなんて一体誰が決めたんだろうね。」と、報告書に目を通しながらぼやく正守が、誰のことを考えてそのようなことを云ったのか。理解したくもないのに、彼の思考が手に取るように分かってしまう自分を、刃鳥は嫌悪している。まるで、お前の恋心は叶いっこないんだよ、と正守に見透かされているばかりか、諦めろと断言されているようで不快感を覚えるからだ。それどころか、副長という立場から正守を傍らで支え続けると誓った誇りすらも傷つけられ、まるでこれでは全否定をされているようではないかと、たまらなくなる。そんな刃鳥の葛藤を知ってか、知らずか。悠然たる態度で「君は美しい恋をしたことが、あるかい?」と、問い掛ける正守に、刃鳥は言葉の代わりに曖昧な笑みをひとつだけ、零すので あった。





美しい恋なんて、遠い昔に死んでしまったわ!(20091222)