暴いて欲しいと云ったの、は。気でも触れたかと応えたの、は。一体 どちらがどちらだったのか。
おそらく。他所の兄弟よりも、自分達は濃密で密接な繋がりで結ばれているのだろうという自覚は、ある。自覚はあるのだが、それに物足りなさを覚えるのも事実であり、どうしたら『兄弟』より前進した関係性を築くことが出来るのだろうか、と思案に暮れた正守の挙句の果ての暴挙が、冒頭の言葉である。兎にも角にも、暴いて欲しいのだ。嘘と虚像に塗れた正守自身をリセットする為にも、弟の手で丸裸にして欲しい。熱?愛?情?憎?暴かれるべきは無数に存在するが、それに反比例するかのように自分を暴くべき相手が一人しか存在しないことが、正守にとっての最大の倖福であると同時に、最大の不幸でもあるのかもしれないと想えたのは、「これ以上、兄貴の何を暴けって云うんだよ!そんなに俺が憎いなら、消すなり何なりでもすればいいだろ?!」と、勘違いをする良守が、どうしようにもなく、愛しすぎたからだ。





愛が 伝わらない(20091225)