例えばの話。兄貴を失ってしまったら、俺は、狂える自信がある。だから、俺を生かすも殺すも全ては兄貴に選んで欲しいんだ。いつだって選択権は兄貴だけが握っていて欲しいんだ、と。幼少の頃より無償の愛を捧げる相手と、自分の世界を構成するにおいて必然的であり絶対的である存在は、潤也にとっての『唯一』と『一番』である安藤だけのものだった。安藤がいれば、世界が崩壊しようが人類が滅亡しようがどうなっても構わないし、そんなことに興味も抱けない。まさに、盲目。この、理性を必要としない美しい言の葉を、潤也はこの上なく気に入り、自分と兄の為だけに存在するのだと半ば本気で信じている。それは、云い換えれば安藤の存在しない世界が、いかに無価値であるのかを知っているからでもある。故に、潤也は。兄以外の誰かが齎す美しい終焉なんてはじめから求めてなど、いない。安藤の為だけに狂うことのほうが、遙かに意味があり価値がある。そして、何より遙かに 愛おしいのだ。





愛すら盲目(貴方の零す吐息すら、愛おしくて狂おしい)(20091226)