近藤の話をする時、銀時は決まって酷く幼い顔をする。記憶の中の誰かと近藤を重ね合わせているかのような懐かしさと哀愁混じりの憧憬さを滲ませて、少しだけ眩そうに瞳を細める。だらしなく緩みきった顔付きが穏やかな表情へと変化する様を見て、死んだ魚のような瞳をする男も生きてるのだなと実感出来て妙は落ち着かなくなるのだ。普段からストーカーだの馬鹿だのゴリラだのと近藤を貶す言葉ばかりを投げかけている銀時ではあるが、実際のところ銀時と近藤との関係は対極にあるようでいて一番近しいところにあるように想う。顔も思考もお互いを形作る何もかもが似ていないのに、女の妙には分からない世界で彼等は確かに繋がっている。それに羨ましさを感じてしまうのだ。女は損だ。守られるばかりで何も守れない。刀を振う近藤と共に戦うことも命をかけることも出来ない。女だてら、いかに剣の腕が立とうとも、いざという時女という性がいかに足手纏いになるかということを妙は理解している。待つこしか出来ぬ愛されるばかりの存在であることは重荷でしかない。なのに、確かめようとして見返りを欲しがる。銀時が近藤に求めているものは薄汚れた欲塗れではあるが、女の欲に比べればいっそ単純で潔い。近藤を見つめる銀時を見るたびに想わずにはいられない。妙は男になりたかった。近藤と肩を並べることの出来る男でありたかった、と。
わたしがなりたかったもの(20120118)
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