否定されることには慣れている、と。笑みを形作る兄の全てが、嘘で形成されていることを良守は知っている。そして、その嘘は簡単に形を変えるということも理解している。
可哀想な兄。愚かな兄。優れた力も持ってしまったばかりに、否定され比較される、兄。兄を取り巻く環境は常に負が付き纏い、責められることを前提とした世界でしか生きることを赦されない不憫な正守に対して、良守はいつから歪んだ愛しさを感じるようになったのだろう、と、呆然とする。兄を蔑ろにする愚者への嫌悪感は、いつしか快感と名前を変え、孤独な正守の味方であるのは、自分だけでいいのだと胸を打つ高揚感が、お気に入りの玩具を独り占めする子供めいた幼い執着へと変貌し。180度変わってしまった良守の価値観が、只管に正守を孤独へと縛り付けるのだ。
否定されることには慣れている、と。笑みを形作る兄の全てが、嘘で形成されていることを良守は知っている。けれども、その嘘が。良守の為だけに紡がれている現実を、皮肉なことに良守だけが、知らないのだ。
世界中が君を責める (真実を知っているのは 私だけ)(20091227)
thanks / Chicca