「今年は、去年よりもお前を好きになったよ。だから、来年は、もっと、もっと、お前を好きなるよ。」
憎むべき血も、力も、継承出来なかった方印でさえも。負の対象である万物全てを愛しく想えたのは、良守がいたからだよと微笑む兄に、「兄貴はひとりじゃないんだよ。だから、何もかもを背負わなくったっていいんだよ。」の一言をどうしても伝えられない良守は、中途半端な笑みを形作ることで、今年も素直になりきれない自分を誤魔化してしまった。
珍しくも穏やかな雰囲気の正守に、来年こそは募り募った言の葉を伝えることが出来るだろうか。
遠くから聞こえる鐘の音に、時音が。家族が。兄貴が。皆が。倖福でありますようにと、良守は静かな願いを 託す。





あなたに。きみに。ありがとう。(20091231)