「お前は無茶苦茶すぎる」、と呆れ混じりの深い息を零す善透の姿を知っているのは、世界で唯一自分だけなのだという優越感がサビ丸を高揚させる。この瞬間、この人の世界は自分にだけに向けられているのだと強く意識することで、より一層、善透にのめり込んでゆく自分を自覚し、余所行きの笑顔や文句の付け所のない優等生面ではない自分だけに見せるそれに、酔いしれてしまうのは惚れた弱みだろうか?呆れ半分、諦め半分なあまりにも可愛い素の顔をするものだから、抱きしめたくなる衝動を抑えることに必死なサビ丸に、止めと云わんばかりに追撃された言葉に撃沈させられる。
「でも いつもさ俺を守ってくれてありがとう」と、今にも消え入りそうなか細い声色にどれほど蕩けさせられるか、きっと善透だけが知らないのだ。





貴方のための世界があれば、それだけでいい(20091217)