「あんたの為に命を捨てられるのなら、本望だ」
土方の誓いは近藤を憂鬱にさせる。鬱陶しい訳でも押し付けがましい訳でもない。土方の自分に対する人並みはずれた熱意はさておき、その言葉の本質や決意は認めている。ただ、綺麗事と建前はいくつでも見繕うことが出来るから、いくら信頼している相手であっても信用には至らない。(むしろ、信頼が強ければ強いほどにそれは諸刃の刃となって近藤の一挙一動を突き刺すようで重苦しいのだ)何にせよ。慕ってくれるのは純粋に嬉しいが、それが通常とは異なる色を帯びてしまえば話が違うと否定せざるを得ないだろう。方向性を大いに間違ってしまった土方を正せるのは自分だけだと、どうにかして自分への執着を断ち切り軌道修正をしたいのだが、土方がそれを受け入れるとは到底想えないし、それどころか、それとなく促せば反発しより強い執着に絡めとられてしまいそうなどという、やけにリアルな薄ら恐ろしい想像に支配されてしまった近藤は身動きが取れずにいる。
執着は判断力を奪う。故に、簡単に人は人を殺せてしまうのかもしれないなとやけに冷静な自分と発情している土方との温度差は激しく、「あんたを守る」と熱を帯びた視線を送る土方の誓いに、近藤はいつだって薄い笑みを浮かべることしか出来ないのだ。
この熱に溶ける(衝動を、喰い散らかすような)(20100102)
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