「だから、近藤さんは『本当』は誰が好きなんですかぃ?もうお互いに隠し事はなしにしましょうや。そりゃあ、あんたを追い越すことは、天変地異が起きても不可能ですけどね。それでも、あんたの隣を歩くことは出来る。俺だって一端の男だ。もう、あんたが想い描いているような綺麗なだけの子供じゃないんですぜ。あんたに守られるだけの餓鬼じゃあないんですぜ。」と、言葉を紡ぐ沖田に近藤は、沖田の云うあの頃の「綺麗な」姿を重ねようとするがそれこそ無駄な足掻きだ。優柔不断な自分とは違い、零か壱かで物事を判断する沖田にとって、何もかもを受け入れながらも曖昧に誤魔化そうとする近藤が苛立たしくてならないのだろう。明確な回答をつきつける様はまさに、嘘や誤魔化しは赦さないと首筋に刀を突きつけて答えを迫るそれだ。そんな近藤を察してか、しょうもない御託なんぞをいくら並べたところで騙された振りをするのはやめたんで無意味ですぜぃと沖田は、不敵に笑う。どうしようにもないお人よしで嘘が下手なくせに、何故だか近藤は昔から『隠す』ことだけは人一倍上手かった。見抜けないし見抜かせない。大雑把で寛容な癖をして肝心なところで『隠す』のだ。それは付き合いの長い沖田だからこそ見抜けた癖であり、大人になれば近藤のそれに踏み込むことも出来るのだろうかと願っていたが、望みとは裏腹に成長と同時に距離は遠のくばかりなのだ。土方も自分も踏み込ませない近藤の『本当』。例え、それがどんな色をしていても沖田には受け入れる自信がある。あの頃以上の強さで隠し事の上手な近藤を守る事だって出来る。だからこそ。
あんたが隠そうとする『本当』を 俺に 見せてみろぃ!
あの人を解体する(20100102)
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