泣きたくなるのだ。優しさを与えられると脆くなる。温もりを感じると触れるれば壊れてしまいそうだと躊躇してしまう。なのに、差し出された手はいつでも美しかった。血に塗れていようが、泥で汚れていようがお構いなしに無骨なそれに伊藤の志を重ねようとする姿は泣きたいほどに鮮やかでましてやいらぬ夢を望んでしまうなど、と。白でもなければ黒でもない光を、白だの黒だのと定義づけることで抱いた羨望すら誤魔化そうとしていた事実など、伊藤の慟哭を近藤が理解する日はきっと訪れないのだろう。





そんな愚かな戯言、を(『本当』を『嘘』と名付けたかった あの日)(20100106)