嘘吐きの癖に、嘘に鈍感であるウソップをナミは嫌悪している。それとも、鈍感を装って気づかない振りをしていたいだけなのだろうかと思案ぶる自分に苛立っているのか。ウソップにたいしてクルーが向ける感情は、自分が彼に対して抱くそれと同じであることは認めよう。けれども。けれども、だ。いくら好意を抱えていても、ナミはウソップに好きだと告白するつもりもないし均衡を崩したいわけでもない。ただ、隣にあれたらいいな、と。隣にいて、互いが抱える弱さを分ち合えたらそれだけで満足なのだ。ウソップを独り占め出来たらと願うことはあっても、誰も好き好んで傷つけたいわけじゃないし傷つきたいわけじゃないのだと言い訳がましい屁理屈を並べてみるが胡散臭さが際立って醜悪さに耐え切れず、否応なしに苛立ちが増してしまう。形は違っても、仲間としてウソップに愛されている自覚はある。なのに、それだけでは物足りないと欲張りになりそうな自分が嫌で、ウソップの与える優しさに勘違いしそうになる自分が嫌で、でもその優しさを払いのけることの出来ぬ自分の脆さがたまらなく腹立たしくて、全てをウソップのつく嘘のせいにしようとする狡賢い自分を嫌悪しながら曖昧な答えなんていらないと耳を塞ぐ自分が いて。結局のこと、ナミはウソップの嘘を毛嫌いすることで自分の感情を誤魔化す自分をこの上なく、嫌悪しているのだ。
あんたの優しすぎる嘘は私を傷物にする(20100107)
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