ウソップに抉られた傷は想いの他深いもので、悪戯に疼いてはルフィを悪夢へと突き落とす。
夢の中で何度繰り返したか分からないそれは、背を向けるウソップを止めることは出来ないのだと想い知らされるたびに無力な己に打ちのめされ真夜中に幾度飛び起きたかことか。寝つきのいい自分にしては些か異常な状況は最早、両手両足を使っても数え切れない回数を越えている。滴り落ちる汗を拭いながらも、傍らでウソップの存在を確認し安堵するのも束の間でルフィが眠りにおちることが怖く、あの夢に触れることが恐ろしい状況に陥っているなどと!削られる睡眠に掻き立てられる不安が交じり合って、倖せそうな寝息を立てるウソップに憎悪すら抱く始末で以前の自分達ならこんな心配を抱く必要性などまるでなかった筈なのにと歯痒む様は愚問に近い。船員は船長であるルフィの所有物であった。だからこそ、自らの意思で所有物が自分と袂を別れる利便性など心配する必要はなく、そんな、当たり前でない日常が当たり前で当然だったのだとルフィはかつての己の傲慢さに身震いする。(無知を恥じることは大人になるということだろうか。自己満足の檻の中で、綺麗なままでは生きられないのだろうか。)甘い夢は優しいのにどうして現実はこんなにも苦々しいのか。夢の中で幾度も「御免」を繰り返し赦しを乞うウソップをルフィは、きっと、生涯かかっても赦してなどやれそうにない。
ゆめはあなたをなかせるのでしょう(20100107)
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