卑怯であろうと想いました。多分、それが、彼を手中に収める為の最大の近道だからです。故に、自分の手に落ちてくるようにと罠を仕掛けて気長に『待つ』ことはやめました。彼は待たない人で『待つ』ことで、彼を逃す可能性を知ってしまったからです。ウソップは駆けていく。時々振り返っては零れ落ちそうになるものを大切に抱え込みながら、それでもウソップは駆けていく。きっと、失速はしません。彼は、自分自身への甘えを失速を赦さない人だから。ウソップは誰よりも誇りを重んじる気高い生き物だからです。信念を抱き続けたあの人と少しだけ、ほんの少しだけ似ていると云ったらどんな顔をするのでしょうか。見覚えのある不器用な生き方に泣きたくなるのだと云ったら、彼はあの人のように笑うのでしょうか。獣と違い、複雑な思考回路を持つ人間は分からないことだらけです。それでも、分からないながらにひとつだけ確信を持って云えることがあります。人とは、他人ばかりか自分自身にたいしても疎い生き物でありながら、時として傷つけあうこともあれば救いあうことも出来る。オブラートに包み込んだ本心が見えないからこそ、そこに、愛おしさが生まれるので しょう。
ひとというもの(20100107)
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