「お前は、綺麗事に包まれたまま美しく死んでゆくのだろうな。」
桂のちぐはぐな思考回路で導き出した未来想定図は、どこか滑稽でありながらも光悦するほどに羨むべき美しさを孕んでいる。自分の死に様なんぞに興味はないが(地獄行きは決まっているのだから今更足掻いたところで無意味であろう。それこそ、ろくでもない終焉が待っているに違いない。)自分が認める男の終焉は立派なものであって欲しいなどと瞬間的に願ってしまったのは、あの人の死が念頭を過ぎったからなのかもしれない。刀を交えながらの命のやり取りに不似合いな言の葉は、近藤に動揺を齎すが「いつの日か お前の死に様を美しく描いてみたいものだ」と薄い笑みを貼り付けた男の言葉を生涯忘れることなど出来ないのだろうなとも、想った。
あの人の死を上書きする(20100107)