「お前見てると時々無性に穢してやりたくなる。何だってそんな風に綺麗なままでいられんの?綺麗過ぎて息苦しくなんねぇの?どうにかしちまいたいぐらい反吐が出るんだよ。なぁ近藤。どうやったらお前、おちてくんの?お天とさんみたいに咲き誇るばかりでよ、墜落させてやりてぇ。地の底に叩きつけてやりたくてしかたねぇよ。まぁ、どうせお前のことだから少しばかり汚れても綺麗なままなんだろうけどよ。綺麗すぎて、薄汚れた俺の手なんて届きはしないんだろうけどよ。それでもいいよ、なぁ 滅茶苦茶に汚してやろうか?ってかお願いだから汚させてよ。」お前は綺麗過ぎて苦しくなるんだ、と。焦れたように近藤に縋りつく様は癇癪を起こした幼子に似ていて突き放したいのに突き放せない。それどころか、少しでも突き放せばこの男は壊れてしまうのではないかといらぬ勘繰りまでさせてしまうのだから、もうどうしようにもないと混乱の極みにいる近藤は受け入れることも出来なければ拒絶することも出来ない(ある意味、残酷極まりない行為)に振り回される宙ぶらりんな自分のお人よし加減に泣き出したくなる。鈍い光を放ちながらぐしゃぐしゃと髪を掻き乱す銀髪の男は、普段は死んだような瞳をしているくせに何だって今日に限ってそれを悲痛に歪め、ぎらつかせながら迫ってくるのか!(しかも熱に浮いたように訳の分からない言葉を口走っている)少しでも身じろいだたら唇が触れそうな距離感とか迫られている現状の全てが近藤の理解の範疇を超えている。もしかしなくても貞操の危機ではなかろうか?こんなゴリラ相手に血迷うなよ、と。笑い飛ばせるほど余裕のない切羽詰った銀時を不憫に想いどうにもこうにも迷いが生じ身動きが取れない。(それが自分の悪い癖だとは理解しているし、過去に幾度も痛い目にあっているにも関わらず突き放す選択肢を選べないのだ)どうしよう、勲。どうしたらいいんだろう。困った困った困った、嗚呼くそ!そんな顔するなよ。俺が悪者みたいじゃん!思考ループにはまった近藤の迷いを感じ取ったのか、追撃とばかりに「本当はお前汚れたいんだよ。だから俺が汚してやるよ。」と、歪に唇をゆがませる男の笑みのなんと憎らしいこと!(ってか、勘違いしないでよ!俺は別に綺麗でもなんでもないってば!汚されたくもないけどさ。ってか何で男にこんなこと云われて嫌悪感抱かないの?!おかしくない俺?!)馬鹿野郎 勲!と嘆くには全てが遅すぎる。というか、迷うことは逃げる選択を放棄していることと同義だ。逃げ道を塞がれてどうしろというんだと憤りたくもなるが、男の掌で転がされている時点で全ては無意味だろう。もうどうにでもしてくれと、どちらにしろ逃げることが出来ないのだから近藤がとれる行動はひとつしかない。「卑怯者」と呟いて近藤は胡散臭い男に身を預けた。





墜落記念日(20100108)