無力である。強がりのみで構成された過去の自分を振り返るとき、これでもかというほどに己の無力さに打ちひしがれて立ち位置を見失いそうになる女がいることをあの男は知っているのだろうか。だから、可哀想な女に優しい言葉をくれるのか。だから、望んでもいないと見栄を張りながらも、あの男の来訪を心待ちにしてしまうのだろうかと思案することの心苦しさはいつも妙を空虚にさせる。(何もない空っぽの器の癖をして、いかにも大切なものを背負っていますと胸を張る。そんなもの、当の昔に錆びれてしまったというのに。必死に生きる自分には関係のないステータスであり付属品でしかなかった筈なのに。)嗚呼なんて、と。慟哭することの不自由さ!いかに妙の世界は矛盾に満ちていることか。あの男と出逢ってからというもの、妙の抱く虚しさは顕著なまでに突飛し、行き場を失った情が捌け口を探してのた打ち回り己の醜さをこれでもかというほどに見せ付けられている。醜悪に耐え切れず自分で自分を幾度殺したことか分かったものではない。あの男のような、誰かの世界を変えてしまえるような影響力が欲しいわけではないが、傷口を舐めた振りをして結局は悪戯に生傷を増やしてはそれを晒し続けるような馬鹿な女ではありたくないと想っているにも関わらず、そんな可愛げのない女でしかあれない性分を恨めしく想ったか分からないほどだ。
妙は、自分を求めるあの男の言葉を求めている。
最近では開き直るようにしている。鈍いようでいて妙に聡い男は何も云いはしない。それでも誰よりも妙を、妙の本質を理解しているからこそ、いっそのこのまま身を委ねてもいいのではないかと迷いが生じている。はじめから勝負がついているのだから勝てっこなどないのだ。答えを先延ばしにすることでさえ無意味であり、妙を追い詰める要因に過ぎない。何故ならば。態度でいくら取り繕うとも、あの男の言葉に意味を求める時点で自分の弱さは露呈されたようなものなのだからだ。





私の弱さを数えました(20100109)