嘘をつくな。「ユウ君は優しいのね」と浮かべる微笑みが小春なりの拒絶であることにユウジは気づいている。無意識なのか意図的なのかは判断し難いが、ユウジにはそれがこれ以上自分に踏み込ませない為の防波堤であることをもしかしたら当の本人である小春以上に熟知しているかもしれないという自負がある。嘘をつくな。嘘をつくな。俺はとっくにお前の嘘を見抜いている。小春、小春、小春!可愛い小春。華奢な小春。「一氏」と、以前のように名前を呼ばない小春。俺を受け入れない小春。俺を求めない小春。築いた時間をなかったことにしようとする小春。残酷な小春。なのに、優しい小春。そんなお前に魅了された俺はとっくの昔から小春に焦がれ続けていることを知っているだろう?。愛しくて憎らしい小春に振り回されることをこんなにも望んでいることを理解しているだろう?小春、小春!嘘をつくな。俺は知ってる。お前の嘘を、その嘘の在り処を知っている。
愛しているんだ 小春。だから愛していないなんてそんな、くだらない 嘘をつくな。
嘘と凡愚(20100115)