ユウジの必死さや直向さに小春は憧れを抱いている。苦をせずとも何でも出来て何でも手に入れることさえ可能であろう自分にはもしかしたら一生かかっても縁がないかもしれない挫折を抱えながら立ち上がろうとするユウジが、小春の瞳にはどんな艶やかな宝石よりもどれだけ美しいと賞賛される美女よりも眩く映るからだ。だから、ふとした瞬間に恐ろしくなる。小春の敬愛するユウジの無垢さを汚しかねない己の暗い感情に戸惑いを隠し切れずにいる。綺麗であってほしい。例えそれが、束の間の夢であったとしてもユウジの綺麗なそれを見つめていたいし覚えていたい。「小春」と自分の名を呼ぶ時のあの独特のイントネーションをこの身に刻み込みたい。なのに、時間が足りない。大人になりかけている彼に残された綺麗な時間は驚くほどに 少ない。
憧れが憧れのまま終わるのか、それとも名を変えるのか。天才的な頭脳をもってしても小春には読めない不確定な未来がある。それでも、羨望を抱くユウジの無垢さはどれだけ時を紡ごうがどれだけ生き様が激変しようが小春の中に綺麗なままの姿で生き続けるのだろう。例えばの話、命題である永遠の在り処について論議を醸し出すことがあったとしてその時小春には胸を張って述べることの出来る答えを一つだけ持ち合わせている。
永遠とは 何か。
羨望と無垢さが入り混じった少年だったユウジこそが小春にとっての永遠なのである。
えいえんというきみのなをかたどる(20100115)
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