苛立って安堵する。相反する二つの感情を持て余し気味である沖田は、それに解放されたいのかあるいはこのまま縛られていたいのか最近では自分で自分自身が理解出来ずにる。ストレスなんてものは適度に小出し発散するのが一番の解決方法だと自負しているにも関わらず一種の消化不良を起こしている有様なのだ。(小出しする相手はリアクションが大きければ大きいほうがからかいがいがあるわけなのだが、喜ぶべきことに沖田の周辺にはそれに該当する相手がより取り見取りで存在しているのでそういった意味では事足りている)安堵することに苛立っているのか、またはその逆しかりであるのか。嚥下しきれない情がポロリと唇の端から零れ落ちそうになる時、いつだって持て余し気味な感情はとある特定のひとりに対して総攻撃を仕掛けようとする。言葉で嬲り舐めて噛んで啜って臓器を傷に晒す。押しつけられた熱を拒絶するどころか困ったような顔をしてそれでも受け入れようとする男の眼差しは、まるで餓鬼の悪戯を微笑ましく見守る親のそれと似ていて沖田に不快感を募らせることを一向に理解し切れていない。故に、日々エスカレートする衝動は言葉で嬲り舐めて噛み付いて分厚い筋肉で覆われた皮膚を噛み切り零れる血を啜ることで美しい筋肉で覆われた滑らかな肢体を自分色に染め、所有印を描くが為に引っ掻いて絡み付き臓器を傷に晒す。憧憬と羨望を一心に集める男に刻み込む痛みは、これでもかと沖田を堂々巡りの悪循環へと誘うのだ。絶望したまま引き攣り失望と共に歪めた顔をいくら求めようが、子供ではなく男として自分を見て欲しいのだと主張しようが無視される願いに最近では暴走を止めて欲しいのかあるいは暴走を赦して欲しいのかどうしたいのかどうして欲しいのか自分で自分が分からない状況に陥っている。だから、苛立って安堵する。決して拒絶されないことを前提とされた寸劇で葛藤することの愚かさ。癇癪を覚えたばかりの子供のように駄々をこね、あんたの全てを手中に収めたいのだと見栄もプライドも何もかもを取り払って心底愛を欲する男の前で生まれたての赤子のように沖田は、泣き喚く。
せかいのこわれるおとを きく(ほうかいはあなたのこえに にている)(20100123)
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